こんにちは。
来る2023年4月に秩父鉄道線のダイヤ運転を行いました。
僭越ながらダイヤ作成を担当しましたので、完成までの流れを備考録として残しておこうと思います。
実踏
ダイヤ運転を行うにあたり、路線が決まった時点でどの駅を再現するか(駅選定といいます)、どの列車を再現するかを実際にテーマ路線へ訪問し精査します。
秩父鉄道といえば貨物、SLということでそれらは必須事項。
特にインターネット上に情報の少ない貨物列車の運行形態は実際に現地に行くことで徐々につかめてきました。
朝:影森にカラの貨物が2本
午前:主に三輪(影森)~三ヶ尻の運行
夜:意外と遅くまで列車が設定されている(砕石の状況によっては運行なし)
午前中に三輪の砕石がない場合、午前中に武州原谷~三ヶ尻のみ運行するなど特異点もありました。
また、秩父と言えば秩父夜祭。路線決定から運転会開催までに12月3日を迎えることができたので、こちらも実踏に向かいました。
秩父夜祭といえば御花畑駅近くの踏切を山車が横切るため、列車の運行を止め架線を取り外すという作業が行われます。
この再現もダイヤ運転の醍醐味ととらえ、組み込むことにしました。
駅選定
ダイヤ運転を実現するために駅を取捨選択します。
普通列車の運行はもちろん、貨物、SL、秩父夜祭と秩父鉄道線の魅力を詰め込むため37駅を10駅に凝縮。
この決定した配線を用いてダイヤ運転に使用するダイヤグラムを作成していきます。
ダイヤ作成(案ダイヤ)
まずはたたき台としてVer.1を作成しました。
見どころとして以下に留意し、製作を行いました。
・アウトレット増発臨時として設定された熊谷駅~寄居駅間の臨時列車を設定する
作成当時はアウトレット開業に伴う増発が盛んに行われていた頃であり、1901レ~1902レを設定しました(熊谷駅~寄居駅~熊谷駅の臨時列車)
また、急行秩父路が途中で先行する普通列車を追い抜いていることもわかったので組み込んでいます。
実際には永田駅(武川駅~小前田駅間)にて追い抜きを行っていましたが、再現駅からは外れてしまったので同じような構造の小前田駅での追い抜きとしています。
同時に下り普通1509列車も小前田駅にてこの2列車と交換するように設定しました。
こうすることでダイヤ運転中に「この3列車を小前田に集めればよい」と信号員が直感的に判断出来るためです。
本番ダイヤまでこの追い抜きと交換を同時に処理するダイヤは受け継がれ、本番当日もちょうど17時頃ということも相まって時報間隔でうまく回っていました。
貨物列車は合計3往復設定しました。
午前中三輪(影森)にて2回積み込み、午後武州原谷にて1回積み込みの計3往復で、午後の武州原谷では長めに時間を取り、実物同様の突放作業も再現できるようになっています。
Ver.1のダイヤを会内で共有し修正事項を洗い出していたところ、秩父鉄道より2023年3月ダイヤ改正の概要が発表されました。
Ver.2ではVer.1からの修正と合わせ、このダイヤ改正の内容を取り込み作成を行いました。
Ver.2の作成
・午後の西武直通廃止
・東武輸送スジを設定
Ver.1ダイヤでは西武車が午前の長瀞着から午後の長瀞発まで長瀞に留置される形になっていました。(実際には西武車は長瀞駅には留置されず、秩父駅まで回送されて留置される)
これを是正すべく、武州原谷駅を交換駅化、回送を秩父駅まで走らせることになっていました。
この西武車回送を運転するため、電気部(信号担当)や全体のプロデュースを担当するプロジェクトリーダとも話し合い、(実際とは異なりますが)貨物駅の武州原谷を交換駅とすることで長瀞に着いた西武車を返却することとしました。
武州原谷を交換駅化することで長瀞駅から秩父駅へ回送、日中は秩父駅に留置し、午後の運転時間になると再度秩父駅から長瀞駅へ回送するという実車と同じ運行形態をとる予定でした。
しかし、ダイヤ改正の概要を読む限りでは午後便が廃止されるようだということがわかり、一旦仮でそのまま御花畑から西武線方面へ返却する”回送列車”とすることとしました。
また、東武鉄道の車両を東上線⇔本線間で行き来する際に設定される臨時貨物列車も設定しました。
Ver.2(夜祭ダイヤ)の作成
Ver.2からは12月3日の夜祭臨時ダイヤを設定することにしました。
・貨物2運用西武直通2運用が運休のため、4運用増。運転士の数は同じ
・架線撤去時刻は1時間前倒し
・架線撤去直前には6000系の回送を設定
・2両の7800は本物同様羽生駅~熊谷駅間のローカル運用
夜祭当日は貨物列車と西武直通列車が運休となります。
それぞれ2運用ずつでしたので、秩父鉄道線内の臨時列車を4運用増発することを目的に設定しました。
まず、御花畑駅~影森駅間の架線撤去時刻は現実より1時間前倒しの19時~21時30分に設定。これは現実同様の22時30分終了だと熊谷までの最終列車が運転できなくなるためです。
架線撤去直前、最終列車が通過したあとに6000系の回送列車が設定されていたため、こちらも設定しています。
何度か秩父鉄道の夜祭ダイヤを見ていますが、大抵架線撤去直前にこの6000系の回送列車が走行している気がします。
露払い的な意味があるのでしょうか
影森駅から秩父駅までの回送列車として6000系充当の868レを設定しました。
架線撤去直前、最終列車となる1516レの続行で設定しています。
この6000系は秩父駅にて調査を行っていた会員より秩父駅側線にそのまま入線したとの証言をいただいたことから、同じく秩父駅側線に入線させています。
その後、入れ換えて22時台の熊谷行きとして運転しています。
夜祭当日は2両編成の7800系では輸送力不足となることから、熊谷で系統分割し7800系は羽生駅~熊谷駅間のピストン運用に就きます。
これをダイヤ運転でも再現しています。
21ゥの列車が羽生駅~熊谷駅間をピストン輸送していることがダイヤから読み取れるかと思います。
最後に復路輸送です。
秩父夜祭では主に秩父駅から熊谷駅に向かって復路輸送が設定されます。
これを再現すべく20時台から熊谷方面へ多数の列車を設定しました。
列車番号ですが、実車では98列車まで使い切るとそれ以降は夜祭の”Y"がつき、Y2列車、Y4列車と続きます。
ダイヤ運転では使い切るほど列車は設定されていませんが、夜祭ダイヤの見どころととらえ、最後の2本をY4、Y6列車としました。
Ver.3の作成
Ver.2の修正をしていたところ、前回のダイヤ改正概要に続いて3月のダイヤ改正の時刻表が発表されました。その点を踏まえ、Ver.2からの微調整を加えVer.3を作成しました。
・急行秩父路の運行区間変更(熊谷~影森~熊谷)⇒(羽生→三峰口、影森→羽生)
・西武直通列車の急行化を反映(スジは変わらず)
・西武直通列車は御花畑→長瀞が急行、長瀞→御花畑及び三峰口→西武秩父が営業となった
6000系が使用される急行秩父路号の運転区間が延長させることがわかりました。それまでは熊谷駅~影森駅間のみの運転となっていましたが、これが羽生駅~三峰口駅までの全線に拡大されました。
また、午前中の西武直通列車が長瀞・三峰口まで運転されたあと、復路がそれぞれ御花畑、西武秩父まで”営業運転”されることがわかりました。
さらに長瀞までの直通列車は秩父鉄道線内で急行となることもわかりました。
ダイヤ運転で再現する駅には全て停車するため、スジはそのままに急行としています。
Ver.3ではこの3点を反映しています。
Ver.3(夜祭ダイヤ)の作成
基本ダイヤが変更されたことを受け夜祭ダイヤも微調整が入りましたが、並行ダイヤであることもあり、ほとんど変更はありませんでした。
そのままVer.2を踏襲しています。
以上の変更をもって、ダイヤ作成が終了しました。
本番前に行った最終確認のためのプレ運転会でも問題のないことを確認。
このままVer.3のダイヤを使用して本番を迎えることになりました。
久しぶりにダイヤを担当したため、備考録としてまとめてみました。
1年前に実施された夜祭ダイヤをベースにしたダイヤですが、せっかくなのでこのタイミングで公開させようと思い、公開に至りました。
記事中の何枚かの写真は会員より提供していただきました。ありがとうございました。
また、ダイヤを担当することがあれば備考録として残したいと思います。
それでは。